ガタカ。
これはとても心に残る映画でした。
生まれた時のDNA検査で、将来の病気の発生確率や寿命までほぼ正確に予測されてしまう近未来が舞台のSFミステリー映画です。
この時代では、夫婦は人工授精を行い、あらかじめ遺伝子的に欠陥のない子供を作ることが「自然」になっています。
そんな時代の中、主人公のビンセントはカーセックスで命をさずかり、総鬱病になる確率40%、心臓疾患になる確率99%という「非適格者」として生まれます。
それでも宇宙飛行士になる夢をあきらめられないビンセントは、宇宙飛行士養成所「ガタカ」に入りたいと思うものの、遺伝子検査ではねられてしまう。
そこで遺伝子は完璧であるものの、事故で下半身不随になってしまったジェロームという青年の協力を得て、彼になりすまし、ガタカの職員になることに成功します。
ガタカ内では、毎日のように血液と尿検査が行われており、それが本人確認のためのIDチェックであると同時に遺伝子検査にもなっていて、「適格者」か「非適格者」か一瞬で表示されてしまう。
そのためビンセントはジェロームから、遺伝子偽装のために毎日、尿、髪の毛、ふけ、血液の提供を受け、綱渡りのように遺伝子チェックをくぐり抜けています。
それでもビンセントは強い意志で努力を続け、念願の土星行きの宇宙飛行士に選ばれます。
ところが打ち上げまであと数日というときになって、ガタカ内で殺人事件が起こり、その捜査の過程で、ガタカ内で見つかるはずのない「非適格者」のまつ毛が見つかってしまう。
普段の検査に加え、警察によってさらに厳しい遺伝子検査が実施されるようになり、次第に追い詰められていくビンセント。。。
私は、この映画のように遺伝子が公然と社会で最重要視される未来はこないと思う。
それはまさに主人公のビンセントが示したように、人生とか人の社会的な価値は、遺伝子よりも意志や行動、努力の継続によって決まる部分の方がずっと大きいと思うからです。
しかしこの映画は、「運命は自分で切り開く」といった正統的な、わるくいえばありきたりなテーマを扱いつつも、ジェロームという青年によって、もう一段深い部分が描かれているのが凄いと思う。
以下ネタばれ注意。。。
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やさぐれていたジェロームはビンセントと出会い、彼と契約して毎日血液などを提供し、交流を深める中で、次第に生きがいというか、希望を得ていったように感じます。
警察の捜査が自宅に及んだときなど、彼は必死の演技でビンセントを庇うのです。
しかし実は彼の心の中は、暗く静かな諦観で満たされていっていた。
優秀な素質を持ちつつも、一度心が折れ、必死に生きることを放棄してしまったジェロームに、再び自分の人生を能動的に生きようとする力は湧いてこなかったのです。
このあたり私も身につまされましたね。。。
成功者や勝利者の話ばかりが世に伝えられる中で、挫折した人間が結局その後も何もできずに消えていくという、あまり語られることのない真実が描かれていると思うのです。
ビンセントが宇宙に旅立つ日、ジェロームは自宅で静かに自分の首に銀メダルを掛けます。
それはかつて水泳競技で彼が勝ち取ったものなのでした。
「金メダルで当然の遺伝子を持っていたのに、銀メダルだったんだ」
ううっ、ジェローム。。。
私は愛しているぞジェローム!!
